世界遺産・富士山。しかしその登録までの長い道のりの陰には、多くの方々の多年にわたる地道な努力があったことは、意外に見過ごしてしまいがちです。

富士山は、歴史・民俗的価値、信仰的価値、文化的価値、美術的価値など、多様な価値を有する世界でも貴重な山。その総体的な価値こそが、世界の宝として認められたわけです。

今回ご紹介するのは、10数年にわたって、富士山の持つ多様な価値を発掘検証しつづけてこられた堀内さん。

富士吉田市の博物館の学芸員だった当時から、今に至るまで、途絶えることなく繊細かつ地道な学術調査を重ねていらっしゃいます。地の下に埋もれた隠れた歴史をひもとき、地元の方でさえ知らなかった太古の事実に陽の光を当てたり、古い和歌の大海のような文献をひとつひとつ当たって「富士」の記述を分類整理したりと、その作業は警察の鑑識を思わせる繊細な作業と検証の連続。

しかしこうした膨大な作業を重ねることで初めて、霞の向こうにあった富士山の真の価値が総覧でき、世界遺産への登録へと結びついたのです。

堀内さんは仰います。「例えばここ忍野は富士山の豊かな湧水が滾々とあふれる自然の宝とも言うべき場所。しかしその一方で、古い時代の富士登山者たちがこの清水で身を浄めた、そんな信仰の地でもあるのです。」

富士山と周辺には、国内外からこれからもますます多くの観光客が訪れるようになるでしょう。「世界遺産」として、そうした方々を受け入れるためにも、単なる観光地ではなくそれぞれのエリア・施設が持つ、世界遺産たる由縁と価値を知ってもらえるような整備が必要になってくるはずだと言います。

「長年、多くの方々が努力を積み上げてきた貴重な成果を、そうした目に見える形にしていくことで、富士山はきっと、さらに偉大な山として世界中の人々に広く受け入れられていくはずです。」