コンセプト・ヴィレッジの暮らし
Vol.45
デュアルライフ”から
まさかの“トリプルライフ”へ
編集者/コラムニスト 佐藤誠二朗さん
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コンセプト・ヴィレッジの暮らし
Vol.45
編集者/コラムニスト 佐藤誠二朗さん
東京で生まれ育ち、ずっと生活してきたフリー編集者でコラムニストの佐藤さん。同じく東京を離れたことがなかった妻子とともに、ご本人が〝山の家〟と呼ぶ第二拠点を山梨県・山中湖村に持ったのは2017年のことでした。東京と山中湖でのデュアルライフの様子は、ウェブメディアでコラム連載され、23年秋には一冊の本として刊行。そんな佐藤さん一家、今春からは拠点がもう一カ所増え、〝トリプルライフ〟が始まったのだとか。一体なぜ? 詳しく話を聞きました。
「デュアルライフは楽しいし、得ることは大きいですが、行ったり来たりの慌ただしい生活をいつまでも続けるつもりはありませんでした。どこかのタイミングで二拠点を解消し、一つにまとめようと。そうすると東京ではなく、山中湖の方に永住する未来を頭の中に描いていました。ところがなぜか三拠点生活が始まるんですから(笑)。人生は分かりません」
想定していなかったトリプルライフは、奥さんの転職に端を発するものだったのだとか。
「妻とは以前に勤めていた都内の出版社で知り合い、社内結婚しました。僕がその会社を辞めたあとも妻は勤め続けていましたが、今年の春に山梨のテレビ局へ転職することになったんです。じゃあ、いよいよ一家で山中湖村に完全移住するかとも考えました。僕はどこでも仕事ができるフリーランスなので、住む場所は勤め人の妻次第です。でも妻の新しい勤め先は山中湖村からは通いにくく、また娘は都内の高校に進学することが決まりました。それでよく考えた結果、いったんバラけて暮らそうということになったんですよ」
山梨で再就職する奥さんは、それまで一人で暮らしていた実父を連れて甲府に引っ越し。佐藤さんは娘とともに東京に残るというプランです。東京、甲府、山中湖の三拠点で、世代の違う2組の父娘が別々に暮らすという、少し珍しい一家の形が生まれました。
「そんな事情を抱えての引っ越しは複雑で、なかなか大変でしたよ」。そう言って佐藤さんは笑います。
3月まで暮らしていたのは世田谷区内の一軒家。でも娘さんの学校への通いやすさや、奥さんが甲府から帰ってくる際の利便性などを考慮し、佐藤さんは東村山市への引っ越しを決めます。
「僕はもともと東久留米市出身なので、多摩エリアに戻れたのが嬉しいんです。始まったばかりの我が家のトリプルライフは期間限定で、とりあえず娘が大学に進学する3年後には、どう暮らすかをもう一度考えることになるはず。そのときは僕もいよいよ、東京から完全に離れることになるかもしれません。だからそれまでの限られた期間、慣れ親しんだ三多摩地区に住むのは悪くないと思っています」
〝東京の家は賃貸に限る〟という信念を持つ佐藤さん。それは家族の状況変化に対し、フレキシブルに対応できるからなのだそうです。
「妻が東京の出版社を辞めて山梨のテレビ局に転職すると決めたり、娘がそれまで住んでいた家から遠く離れた街の学校を選んだりと、進む先を自由に決められたのは、メインの家が賃貸だったからというのも大きいです。そして山中湖村の家という揺るがない拠点があることも、そうした自由な発想の助けになっているんですよ。何しろ我が家の人たちはみんな山中湖の家が大好き。最終的には帰れる山の家があると思えばこそ、これからどうする? という人生の岐路で、自由な発想と行動ができたと思います」
二拠点生活の一端だった山中湖村の〝山の家〟が、今は別々に暮らす家族の要としての機能を持つようになったというお話です。
いずれ山中湖の家に永住するという気持ちに変わりはないのでしょうか?
「変わらずそう思っています。僕と娘が暮らす東京の家も、妻と義父が暮らす甲府の家も賃貸ですから、状況が変化したらいつでもリセットするつもりです。つまりそこでの暮らしは、根無し草のようなものなんですよ。でも山中湖の家は違います。いつかそこにしっかり根を張るつもりなので、情の入り方も他の家よりだいぶ強いんです。17年からの暮らしで、やはり山中湖こそが終の住処と思うようになりました。ファンキーな一家なので、完全に落ち着く日がいつ来るのか分からないですし、もしかしたらずっとずっと先かもしれませんけど(笑)」
佐藤さんファミリーの多拠点生活ストーリーには、まだまだ続編がありそうです。」
1969年東京生まれ。宝島社の雑誌「smart」の元編集長。現在はフリーランスとして、幅広いジャンルで編集・執筆活動中。著書に「ストリート・トラッド」(集英社 2018)、「オフィシャル・サブカルオヤジ・ハンドブック」(集英社 2021)、「山の家のスローバラード」(百年舎 2023)など。
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