HOME > ライフスタイル&グルメ紹介 > 人々|Vol.29 もっと広く、もっと多くの人に。馬への親しみとその魅力を伝えるために
「人にとって、馬という動物はとても身近な存在なんです」。そう仰るのは御殿場で「岡本ライディングクラブJapan」を主宰する岡本雅海さん。
岡本さんが乗馬を始めたのは5歳の頃。馬がお好きだったご両親に連れられて御殿場で初めて騎乗を体験したのがきっかけだったそうです。
その後本格的に馬術競技の道に入り、中学生の頃には障害飛越競技の史上最年少選手として東日本馬術大会に出場するなど、早くも日本を代表する選手の一人となりました。さらに15歳の頃には単身渡米を決意。アメリカ・カナダの高校と大学で学びながら、世界レベルの総合馬術選手としての実力を磨くとともに、数多くの馬の日常の世話から調教まで、大切なパートナーとしての馬のすべてに関わりつづけたのだそうです。
「10代の少年で特に多感な頃でもありましたし、周囲にいるのは文化も慣習も異なる人達ばかり。もちろん当初は言葉ひとつ通じませんでしたから、たった一つの拠り所が馬との交流でしたね」。
馬がいたからこそ今の自分がある、という岡本さん。見知らぬ海外で自分を支えてくれた馬という存在への深い愛情と想いが、そのまま馬術に打ち込む力になってくれたのだと言います。
総合馬術という競技はあまり一般の方には馴染みがありませんが、コースに設定されたバーなどを飛越する「障害飛越」、馬のコントロール技術を競う「馬場馬術」、そして自然の中に設定されたコースをクリアする「クロスカントリー」という3種目で競う競技。文字通り、高い技術や馬とのパートナーシップの深さなどを総合的に競うもの。岡本さんはこの競技での世界ランキングで、日本のトップランカーとなり、オリンピックを始めとする日本代表にも選出されるなど輝かしい実績を誇ります。そんな岡本さんが、選手として第一線を退いた後で考えたのは、これまでの自分を支えてくれた存在への感謝をお返しすることだったと言います。
「若い頃からの自分をずっと支えてくれた馬への想い。そして競技は言うに及ばず、今の私をサポートし続けてくれた数多くの方々に、何かお返しをしたい。そう思って始めたのがこのクラブなんです」。
「岡本ライディングクラブJapan」は、2011年に設立され、2012年にここ御殿場に本拠を構えました。日本のトップランナーとしての岡本さんの高い乗馬技術とコーチング技術、そして馬そのものをパートナーとして愛し慈しむその考えに共感し、クラブには日本はもちろん海外からも数多くのスタッフが集っています。
そんなクラブがまず目指すのは、馬の魅力を多くの方に知ってもらうこと。
「馬って、なかなか一般の方にはふれあったり親しんだりする機会がないですよね。でも本当は誰にでも乗れるし、誰にでも楽しめるものなんですよ」。
初めてのことにチャレンジする時は誰でもワクワクする、その気持を大事にしたい、と岡本さん。
子どもからシニアまで誰にでも楽しめる馬の魅力と、そのリラクゼーション効果をもっともっと知らしめたいと語ります。
「初めての方が口々におっしゃるのは、馬に乗って初めて体験する視座の高さですね。いつも見慣れた風景がそれまでとはまったく違うものに見える、と驚かれます。中には“王様やお殿様のようでちょっと偉くなった気分”と言う方も(笑)」。
初めての方にはもちろん、クラブのスタッフが引く馬に乗っていただくところから始めるので、お子さま、女性、シニアの方でもまったく心配はいらないとのこと。ちなみに…とお聞きすると、人にもよりますが、全くの初心者でも数回乗れば一人で並足ができるようになり、10数回乗れば駆け足までマスターできるそうです。
クラブでは、初めて馬に乗る方への体験コースを用意している他、「こんなことがしてみたい」「こんなコースで乗りたい」などの希望を叶えるコースアレンジもできるそう。
「岡本ライディングクラブを、馬を愛する人々が集う大切な場所にしていきたい」。岡本さんの想いが、こうした所にも表されています。
一方でこれまでずっと打ち込んでこられた馬術競技に対する情熱も、まったく衰えてはいません。クラブに集う方々の中からは、地元を始め数々の大会で活躍されている方々も、年々増加の一途をたどっているのだそうです。
「御殿場には国内有数の素晴らしい馬術競技場があります。ここで開催される大会には全国各地から遠路はるばる数々の選手が集まるのですが、そんな競技場までクラブからはわずか30分ほど。これほど恵まれた環境もないと思っているんです」。
岡本さんの夢は、一人でも多くの方々に馬の魅力を伝え、馬に親しむ方の裾野を大きく広げること。そしてそんな中から日本や世界の頂点をめざせる選手を育成すること。
まるで富士山のようですね、と返すと「本当にそうですね!」と明るくお笑いになっていました。
年齢を問わず誰もが楽しめ、お子さまの情操教育やシニアの健康保持にも役立つという乗馬。またいったん夢中になれば、その奥深さと魅力は果てしないと言います。あなたもぜひ、一度体験してみることから始めてみてはいかがでしょうか。
社団法人「全国乗馬倶楽部振興協会」上級指導員認定・財団法人「日本体育協会」認定コーチ
社団法人「日本馬術連盟」審判員・「国際馬術連盟」テクニカルコース修了
1998年世界選手権・日本代表。同年、読売新聞「日本スポーツ賞」を受賞。2000年世界ランキングでは日本人最高位にランクされシドニーオリンピック日本代表資格を獲得。
現在は初心者から上級者まで幅広い人々に、馬の魅力とその高い馬場技術を伝道している。
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