富士五湖の自然を体感する、価値ある大人の遊び場を

自然と共に過ごす幼少期

「友達がゲームに夢中になって遊んでいる頃、川や湖遊び、秘密基地づくりや自転車で坂道を下るなど、自然と共に遊ぶことに没頭した子ども時代でした」。大森さんは自身の幼少期をそう振り返ります。山中湖村に生まれ、高校卒業までをこの地で過ごした大森さん。山梨県都留市で魚屋を営む祖父（母方の祖父）から、釣りを教わると、その魅力にハマり、大学卒業後は釣りをするためにニュージーランドへ旅立ちました。「仕事が休みの日は、川や湖、海など、どんな場所でも行って釣りをしました。ブラックバスやマス、釣った魚の種類もさまざまです。僕にとって、自然と遊ぶのは小さな頃からあまりにも当たり前のことで、それを仕事にできるかもしれないと気づき、沸々とした想いが湧き上がってきたのはちょうどこの頃でした」。現地には、当時まだ日本で耳なじみのなかったゲストハウスが定着していて、宿泊と遊びをセットで楽しむ文化が根付いていたそう。大森さんは、その光景に故郷山中湖が重なったといいます。

僕の日常が、誰かの特別に

帰国後まず始めたのは、地元での人脈を広げることでした。高校を卒業してから数年間、地元を離れていた大森さんは、親しい友人以外との関わりが少なったため、地元の飲食店に就職し、積極的に地域の情報やつながりを拾い集めました。「長く地元を知る方や山中湖に別荘を持ちながら二拠点生活をする方々と知り合うことができました。その中で、改めて“遊びを仕事にできる”と背中を押してもらえたのです。幼い頃から当たり前に感じていた山中湖での遊びが、都内の方には非日常であって、特別な経験であると確信できました」。

こうして大森さんは、富士五湖ならではの遊びを提供するサービスの実現に向けて本格始動します。2017年、自然体験を提供するTHE HIGHEST PEAKを設立。青木ケ原樹海洞窟探検や星空観察、山中湖一周サイクリングや富士登山など、さまざまなツアーを企画し、海外や県外から訪れる観光客を中心に、瞬く間に人気を集めるようになりました。

心地良いがちょうど良い

キンと冷えた冬の空気、太陽の光がキラキラと反射して美しく輝く湖面、頬を撫でる爽やかな夏の風、宝石のように山々が色づく秋の紅葉など、山中湖の魅力は語り尽くせぬほどあると話しながらも、大森さんが幾度となく口にしたのは“心地よい場所”であるということ。「人の多い夏休みシーズンであっても、身動きが取れないほど混むこともないし、車を少し走らせれば、買い物を楽しめる場所もあります。都内や静岡とのアクセスも申し分なく、何をするにもちょうど良い場所だと思うのです。自然と暮らしが上手に調和した、心地良いまち、それが山中湖だと思います」と語ります。

山中湖には、移住者や別荘との二拠点生活を送る方も多く、田舎でありながら、新しい感覚も併せ持つまちであることが魅力の一つです。大森さんのツアーをきっかけに、富士五湖の魅力にひかれ、この地へ移り住む人も少なくありません。ツアーを通じて、地域の正しい魅力を伝えるのも、課せられた使命だと感じているようにも映ります。

山中湖を価値のある地へ

「このまちが好きだからこそ、自分本位なツアーを企画しないと決めています。地域の人々、そして何よりこの雄大な自然があるからこそ、僕の仕事は成り立っているのです。自然を守る、地域の人々を守るのは当たり前のこと」。近年、人気が急増している“愛犬と一緒に鹿角採集ツアー”は、まさに大森さんが目指してきたもの。愛犬連れが多い山中湖でありながら、愛犬と楽しめる場所があまりない現状に気付き、日頃から地域と連携して害獣駆除活動を行い、山を知り尽くす大森さんだからこそ実現できるツアーを考案。地元ホテルとも手を組み、山中湖を、より価値のある場所へと発展させる働きを行っています。「この先も美しい山中湖が変わらないといいなと思っています。そのためにこれからも、山中湖や富士五湖の価値をネイチャーガイドとして伝え続けていきます」。そう大森さんは未来を見据えながら優しくほほ笑みます。